JR九州のIPOについて
上場まであと10日になり、売出価格(2600円)と東証一部への上場が決まりました。
目論見書をみていくつか思ったことを書きます。
今回のIPOでJR九州の何かがかわるのか
それほど変わらない。今回のIPOは売出が100%となっています。つまり、IPOによって投資家から集めた資金は全て、国の機関である鉄道・運輸機構の物となります。つまり今回のIPOでJR九州が手に入れ、新たな投資に用いることができる資金は0。今回のIPOが直接JR九州の投資活動につながるわけではありません。
なお同機構では資金を旧国鉄社員の年金や、旧国鉄内でも問題のある残りの2社(北海道と四国)の経営安定化のために用います。昨年の郵政IPOでは調達資金を震災復興のために充てていたようですが、今回はそのようなことはありません。
JR九州の事業構成
JRと名乗りながら大半は不動産事業で収益を上げています。EBITDAベースでは、運輸サービス事業から38%, 駅ビル・不動産事業から40%の収益を上げています。売り上げではそれぞれ47, 15%となっているので、運輸サービスの効率性の低さ、不動産事業の高さが分かります。
ただ不動産事業に関しても博多や熊本、大分、長崎、鹿児島などの主要ターミナルの前にはアミュプラザなどの大型商業施設をすでに運営しているため、今後も新規出店により収益を拡大することはできないように思われます。
JR九州の成長性
目論見書を読む限りは今後の展開が不明瞭です。そもそも今回は公募増資を伴わなかったために資金使途が書かれていません。中期計画の概要が一部目論見書にも書かれていますが、抽象的です。福岡以外の県では人口減が急速に進んでいる中、どこに成長性を見出しているのかが分かりません。関東に不動産事業を展開する様子がありますが、不動産事業にしか活路がないということでしょうか。
JR九州と言えば「或る列車」や「ななつ星」といった豪華列車が有名ですが、それらがどの程度収益を生んでいるのか、また今後拡張していくのかも読み取れませんでした。
まとめ
かつては旧国鉄内では北海道、四国以上に問題児扱いされていた時期があったそうですが、豪華客車の導入などによってIPOをするにまで経営の安定化が進んだようです。
九州は天候リスクが大きいこともあってダウンサイドリスクばかりに目が行きますが、公開後の価格形成がどのようになるのか気になります。