Cross-sectionでの資産価格モデル分析を行う際の統計的有意水準の決め方

多くの論文が、期待収益率に影響するファクタを見つけてきたと主張する。既存の統計検定(t=2, p=0.05を基準とする)では結果が甘く出るので、筆者らはより強い水準(t=3, p=0.0027)を用いるべきだと主張している。

Campbell R. Harvey, Yan Liu, Heqing Zhu; … and the Cross-Section of Expected Returns, The Review of Financial Studies, Volume 29, Issue 1, 1 January 2016, Pages 5–68, https://doi.org/10.1093/rfs/hhv059

情報の非対称性と証券発行

Gomes and Phillips (2012) "Why do public firms issue private and public securities" JFI

米国での株式・負再発行の頻度について。public marketとprivate marketに分けて分析をした。public marketは公募社債と公募増資、private marketは第三者割当と私募債というイメージかな。

public marketとprivate marketで発行方法の頻度が異なる。具体的には
という具合。public marketでは負債>増資の一方でpublic marketでは負債>増資となっている。筆者らはこれが情報の非対称性によるものだと解釈している。
つまり、public marketではMyers and Majluf (1984)の理論が当てはまるが、private marketでは投資家がより私的情報を取得する誘因があるため(Fulghieri and Lukin, 2001)。

 最近のequity issuanceの議論では情報の非対称性がそれほど強調されていないという意味では面白い論文。

 

誰が現金を持っているのか

朝日新聞に以下の記事が上がっていた。「内部留保」という曖昧な表現が使われていない。

企業の現預金、最多の211兆円 人件費はほぼ横ばい:朝日新聞デジタル

私は有料会員ではないので、全文は読めないが、読める範囲だけでもいくつか疑問が湧いてくる。ここでは現金保有に限定して詳しく見てみる。データは法人統計調査のサイトからダウンロードした。サイト上からは1960年からのデータをダウンロードできるものの、後に見る企業サイズ別の分析をし、そこで一貫したデータが取得できるのが1975年からであるため、以下は全て1975年以降のものである。注釈などの一貫性がない点についてはご容赦を。

まずは全体像を確認する。金融業を除いた全産業の総額は以下の変遷である。記事時中に211兆円とあるが、2016年時点では確かに210兆9590億円となっている。記事中では「リーマン・ショック」という表現があるが、上昇トレンドは2000年あたりから見られる。なお、1989年あたりに1つのピークがあるのが確認できる。

f:id:yamadee:20171113121520p:plain

企業が現金を貯えているのは日本でも米国でも、少なくともここ10年にわたって指摘されている事実であり、なんら面白みがない。

ここでは、せっかく法人統計調査を用いているので少し掘り下げている。同調査では、企業サイズ別の総額が掲載されている。そこで、サイズ別(具体的には(1)資本金1千万未満 (2)1千万円以上 - 1億円未満 (3)1億円以上 の3グループに分けて分析を行う。

現金比率の比較

コーポレート・ファイナンスの現金の研究で多く見られる定義である現金比率、具体的には資産合計で現金を除したもの、を算出して、サイズ/時系列での変化を確認した。結果は以下のとおりである。直近、なんとなく上昇傾向が存在すると言えるような言えないような、何とも言えない結果である。

それより目につくのが、大きな企業群の低さである。1990年には14%であったものが、徐々に減少し2008年に5.9%にまで減少した。その後は上昇してはいるものの、それでも8.5%であり、2016年時点での他のグループが20%程度であること、1990年代の水準と比較してかなり低い水準である。

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1社あたりの平均現金保有額

1社あたりの現金保有は増えていなくても、企業数自体が増えているのであれば、総額が増えるのは自然である。そこで、サイズごとに、現金保有額を調査対象企業数で除することで、1社あたりの平均現金保有額を算出した。大きなサイズの企業が、絶対的に多くの現金を溜めているのは直感的である。そこで、ここでは2000年の1社あたり現金保有が1になるように基準化を行うことで、時系列での変化が容易になるようにした。結果は以下の図のとおりである。

特徴的なのは、1990年前後の値である。平均現金保有額が2000年のそれの2倍程度ある。直近では2000年あたりから増加傾向にはあるものの、それでも1990年の水準には達していない。

サイズごとに大きな差異は見られなかった。直近年では最も大きな企業群(資本金1億円以上)が大きな値であることが分かる。ただし、ここ数年では、最も小さな企業群(資本金1千万円未満)が大きい時期もあったことも見て取れるため、一概に差があるとは言いにくい。

 

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結論
  • 企業サイズは大きく現金保有に影響する。とくに大企業はそれほど現金を持っていない
  • 時系列で確認すると、バブル期と比較して依然として低い水準

マクロデータなので、個々の企業の特徴を調整できないのが歯がゆい。とくに利益と投資との関係は何ら分析できていないので、だれか未公開企業を含む大きなデータを購入して提供して下さい。

 

ジャーナルランキング

  Name Thomson ABS ABDC
1 JF 6.043 4* A*
2 JFE 4.505 4* A*
3 RFS 3.689 4* A*
4 corporate governance an intenational review  3.571 2 C
5 JME 2.11 4 A*
6 RF 1.95 4 A
7 J. of Financial Stability 1.949 3 B
8 J. of International Money and Finance 1.853 3 A
9 JBF 1.776 3 A*
10 PBFJ 1.754 2 A
11 JFQA 1.673 4 A*
12 JFI 1.627 4 A
13 JCF 1.579 4 A*
14 FM 1.517 3 A*
15 JMCB 1.509 4 A*
16 International Review of Financial Analysis 1.457 3 A
17 J. of International Financial Markets Institutions & Money 1.379 3 A
18 JBFA 1.291 3 A
19 International Review of Economics & Finance 1.261  2 B
20 EFM 1.236 3 A
21 JFSR 1.13 3 A
22 J. of Empirical Finance 0.979 3 A

投稿先を探すのに、IFとかをチェックしたのでついでにメモ。ThomsonのIFはやや信頼性が。。。ということをよく聞くので、他の指標としてABSとABDCもチェック。

やはりというか意味が分からないのはCGのIFの高さ。

 

作成に当たり、ThomsonのIFのリストからは会計系や数理ファイナンスなどは除いた。左端の数値はその上でのThomson上のランキング。ABDCは直近分をサイト上から調べた。ABSはオンライン上に落ちていた2015年のPDFから。

IFがついていないが、Financial ReviewはABSが3、ABDCがAとそれなりの評価。引用数のカウントはし始めているとのことで、再来年くらい位からはリストに出てくるか。Journal of Financial Research はIFが今年から。0.6程度。思ったより低い。

ABDCはカナダや豪州の先生が、ABSは欧州の先生方が気にしているジャーナルランキング。

 

異次元緩和が企業ファイナンスに与える影響

ECBの量的緩和政策の影響を調べた論文を似たようなものを呼んだのでメモ。

Daetz, Subrahmanyam, Thang Wang (2016DP)

2010年に開始したECBの量的緩和政策により経済の中での流動性が向上した。またこれにより金利が低下した。このことにより企業部門の借り入れが大きく増加した。このことは、特に銀行借り入れに依存している企業の借り入れと現金保有を増加させた。

ただしこのことが企業の生産性に与えた影響は確認されなかったとのこと。具体的には投資額や労働賃金には影響が全くなかった。

なお、同様の分析結果はAcharya, Eisert, Eufinger, Hirsch (2017)においても確認されている。

outreg2コマンドで結果を掲載する時に、変数名をこなれた感じにする。

デフォルトだとoutreg2で出力される結果には変数名がそのまま使われます。ただ、それだと空白が使えないだとかカッコなどの記号が使いないことから、ややかっこ悪くなります。私は表中の変数名を分かりやすいものに書き換える作業をしていたのですが、やや煩雑であることから別の方法が無いかと思って探したのが以下の方法。

outreg2コマンドにlabelオプションを付ける。

Stataにデフォルトで入っているauto.dtaを使って説明します。
被説明変数はprice、説明変数はmpg, weight, lengthです。すると以下の様になります。excelオプションを付けた結果を貼り付けています。

 

  (1)
VARIABLES price
   
mpg -86.79
  (83.94)
weight 4.365***
  (1.167)
length -104.9**
  (39.72)
Constant 14,542**
  (5,891)
   
Observations 74
R-squared 0.357
 

 

ここでoutreg2にlebel オプションを付けると以下のようになります。

  (1)
VARIABLES Price
   
Mileage (mpg) -86.79
  (83.94)
Weight (lbs.) 4.365***
  (1.167)
Length (in.) -104.9**
  (39.72)
Constant 14,542**
  (5,891)
   
Observations 74
R-squared 0.357

うん、見やすい。コードは以下の通り

sysuse auto, clear
reg mpg price weight length
outreg2 using hoge, replace label excel
shell hoge.xml

 

変数ラベルを利用する

labelオプションを付けると、それぞれの変数のラベルを変数名の代わりに掲示することができます。変数ラベルは

label variable var_name "hogehoge"

で指定することができます。var_nameが変数名、hogehogeがラベルです。ラベルには空白も記号も使うことができます。

どのようなラベルがついているかはdescribeコマンドで確認できます。

 

これでltassetのような、著者にしか判別できない暗号のような変数名ではなくて、ln(Total Assets)といった比較的まともな変数名を付けることができますね。

なおStata 13では変数名を日本語で表示できませんでした。14を持ってないのでだれか試してみて下さい。 

 

Win 10での画面サイズ変更ショートカットの方法 (スナップ) をWin 7っぽくする。

Windows 10の画面サイズ変更ショートカットの挙動がWin 7から大幅に変わっているのが非常に気になっていたので、その変更方法を。
Winキーを押して、[setting]と入力すると、設定画面が立ち上がる。そのなかの[システム]を選択し、左側の選択肢の中から[スナップ]の中の[ウィンドウをスナップしたときに横に配置できるものを表示する]をオフにすればOK。
やってみれば簡単でした。

横に配置できるものをオンにしたとき、どのタイミングで表示されるか、また表示されるウィンドウの種類がよくわからないので毎回ストレスになっていた。

f:id:yamadee:20170602143113p:plain