まぁアナウンスから1週間くらい経ったんで,時期を逸した感じもありますが。。。
エクイティ・ファイナンスや資本構成の面白い論文,アントレプレナー・ファイナンスのマニアックながら興味深い論文が1冊になっていたので紹介します。
Review of Financial StudiesのVolume 23, Issue 12について(こちら)。

まず,巻頭を飾るのが,資本構成とマクロ経済リスクの関係を論じた論文。内容は詳しく読んでいないですが,モデルだけのようです。データは比較的容易に集めることができるかと思うので,すぐに誰かがフォローするのでしょうか。最近,マクロ経済学コーポレートファイナンスの関係を論じた論文は多いですね。Fama and French modelの理論づけとして,3つのファクタがマクロ経済の指標の代理指標に過ぎず,Fama and French modelは市場リスクとマクロ・リスクが個別企業の株式収益率に影響を与えるとする研究が近年多くでているようですし(Simpson and ARamchander, 2008 Journal of Empirical Financeなど)。
ちなみにこのRFSの2本目も資本構成に関して。より正確には負債構成に関して。負債には,銀行借入,社債転換社債など,いろいろとあるわけです。それらをどのように構成するかを明らかにした論文。この分野を全くチェックしていなかったのですが,先行研究もいろいろとあるそうです。チェックしなければ。ざっと見たのですが,Excelでグラフにしたのを張り付けるのはやめてほしいですね。Tableの中だけフォントが違うので違和感が。。。

あと興味深いのは,Chen, Miao, and Wangの``Entrepreneurial Finance and nondiversifiable Risk''。企業家は,自身の資産ポートフォリオを分散化できないため,資産のほとんどを自身の企業に投資しなければなりません。そのような,分離不可能なリスクが大きい場合,企業家は,早い時期から負債比率を高める,倒産が早い時期に起きるなどの影響があるとのことです。このような状況はかなり特殊なわりに,(特に米国では)日常的に存在する状況です。また,ファイナンスの大きな前提が成り立たないケースなので,学術的にも興味深いものです。同様の論文としては,Healton (2004)などが有名なので,興味がある方はご覧あれ。

株式に関連するものでは,増資前後の空売りの影響を見た論文をあります(Henry and Koski ``Sort selling around seasoned equity offerings'')。日本でも,先月に金融取引委員会が,東証で増資前におかしな空売りが見られると発表しました。たしかFTやWSJにも記事が出ていたはず。ちなみに空売り関連では,JCFに,配当落ち前後での空売りについての論文(こちら)がありました。こっちは読んでいませんが,空売りが今後,ブームになりえるのでしょうか。