挨拶

4月1日付けで長崎大学経済学部に異動になりました。はじめての関西圏外での生活ですが,非常に住みやすい場所です。

心機一転で,(今更ながら)はてなダイアリーからHatena Blogに移行することにしました。

相も変わらずたまにしか更新しないと思いますがよろしくお願いいたします。

 

IPO前の高成長と後の低成長

IPO後のパフォーマンスの低減は,会計操作によるものなのか?
Teoh, Welch, and Wong (1998)以降,IPO企業が裁量的会計発生高を使っているとの議論があるので,それへの反証をまとめる。

  • Chemmanur et al (2009 RFS): 5年前の時点で,会計指標に差が存在した。裁量的発生高はそんなに持続しないはず。
  • Jain and Kini (1994); Clementi (2002): Cash-flowもIPO後に減少。cash-flowは会計的発生高の影響を受けにくいはず。

日本では結果が出ないという話もありますが,さてあるのかないのか。

ちなみに2000年以降は,企業の製品属性なんかと重ねた研究が多くなされています。おいおいまとめて記事にしていきます。

日本企業の配当政策 案外フレキシブルだったって話

Lintner (1956)なんかでも言われている通り,企業は一般には配当を一定額支払う。例えば5円配当みたいな感じで。このことを配当の平滑化('dividend smoothing')と呼ぶ。ここまでが前提。
先週の学会で討論をした論文が面白かった。日本企業を調べてみると,実際には配当額を業績に連動させる企業が多いとのこと。細かな制度や税制は異なりますが,これは配当を自社株買いのように使っているように見て取れます。
例えば以下の企業のIRのページを見ていただきたい。配当額が波打っているのが分かるかと思います。
東京エレクトロン
http://www.tel.co.jp/ir/stocks/dividend/

米国なんかでは,株主還元政策として配当より自社株買いを選択する企業が増加しているとのこと(たとえば,Fama and French 2001など)。ではこの日米の違いは何なんでしょうか。
税制の違い?意思決定の早さ?

とはいうものの,一定配当を行っている企業もあるわけ。なので,例えば,定額配当の企業と業績連動型との,減配時のアナウンスメント効果なんか簡単に論文が書けそうですね。誰か一緒に書いてください。

Fama, E. F., & French, K. R. (2001). Disappearing dividends : changing firm characteristics or lower propensity to pay? Journal of Financial Economics, 60, 3–43.

スタートアップ企業の資金調達

各国において未公開企業のデータセットが整備されたことも反映してか,近年,エントリー・タイトルのresearch questionに挑んでいる論文が増えてきています。

資本制約にあることは,起業家が事業を行う上で一番の障害になると言われています。そもそも起業家の資本制約は,何によってもたらされるのか,あるいは外生的に取り除くべきなのか。
Andersen and Nielsen (2012)は,デンマークの個人レベルのデータを用いて2種類の起業家が起こした企業の成長を比較しました。
一つは,``期せずして''相続などにより多額の資金を得てそれを持って起業をしたグループ。もう一つは,そのような外生的なイベントがないまま起業をしたグループです。
結果としては前者グループの成長が後者グループと比較して有意に低いことが確認されました。
両グループの違いは,自身で資金調達をする能力があるかどうか,という一点です。このことから,資本市場のfrictionを改善し,今の状態では地震資金調達を行うことができない潜在的は起業家に資金を供給することが,必ずしも成長性の高い企業を生み出しているわけではないことが分かる。

つまり,ベンチャーを興したいってやつに,無理やり補助金を出すのはどうかって話。

Robb and Robinson (2012 RFS)ではKauffman Firm Survayを利用して,設立したての企業は銀行融資への依存度が高いことを確認いました。
未公開企業の資金調達手段としてはベンチャー・キャピタル(VC)の役割に関する実証研究は数多くありますが、VCの出資以前の企業の資金調達手段を大規模に調査した論文は少ないとのこと(米国以外ではわりと見かける気がするが。。。)。
VCとの関連で言えば、VCからの出資を受けた企業であっても銀行融資の依存度が高いことが確認されました。
また、企業間信用についても、銀行融資ほどの規模はないが、大きなシェアを占めているとのことです。

  • 銀行間の競争度が中小企業の生産性に影響を与えているのか?

同様の内容を,より詳細に分析を行ったのはKrishnnan, Nandy, and Puri (2014)です。
同論文では,米国銀行の州際業務規制の撤退を自然実験とした上で,中小企業の外部資金調達が自由になることにより,未公開企業の生産性が高まったかどうかを分析しました。
かつて,米国では商業銀行は州をまたいでの営業を行うことが禁止されていました。90年代にその規制が徐々に緩和されることにより,銀行間の貸出競争が高まりました。
この貸出競争の激化が,企業の生産性の向上,具体的には生産性(TFP)の上昇が見られるのではないか,というのがResearch Questionです。
Krishnnanらが用いたデータセットはU.S. Census Bureau’s Longitudinal Research Database (LRD)です。

Andersen, S., & Nielsen, K. M. (2012). Ability or Finances as Constraints on Entrepreneurship? Evidence from Survival Rates in a Natural Experiment. Review of Financial Studies, 25(12), 3684–3710.
Krishnan, K., Nandy, D.K., Puri, M., 2014. Does Financing Spur Small Business Productivity? Evidence from a Natural Experiment. NBER Work. Pap. Ser.
Robb, A. M., & Robinson, D. T. (2012). The Capital Structure Decisions of New Firms. Review of Financial Studies, 27(1), 153–179.

Stata doファイルをダブルクリックしたときの挙動

version 11くらいからか,フォルダ上のdoファイルをクリックしたときの挙動が

  • doファイルを実行する

から

  • do-file editorを起動してdoファイルを加筆修正できる

に変わったように思います。
フォルダ上のdoファイルをダブルクリックしたら,doファイルを実行させたいねんってかたは以下のようにしてください。
Stataのdo-file editorを開く -> Edit -> Preference ->Advancedの``Edit doo-files opened from Windows instead of executing them.''を 無効にする。

  • 海外学会出張での必需品とあったら良いもの

1年半の間に色々と海外学会に参加しました(7回位?)ので。その経験,特にパッキングについて得られた経験をつらつらと書きます。
基本的な方針として,飛行機搭乗時に荷物を預けません。carry-onです。ロストバゲージが怖いこともありますが,目的地到着後に荷物を待つ時間が無駄に感じられるからです。しかも預けた場合,エコノミーに乗るような貧民どもの荷物は出てくるのに時間がかかります。

そのため,スーツケースは機内持ち込み可能なサイズかつ軽量のものを使っています。有名ブランドものではないです。これです。[25Aug2014修正]古いもののタイヤが潰れたので最近購入したのはこれ

安物なので,車輪周りに不満が残りますが,機内持ち込み可能サイズで4035L入ります。結構な容量です。1週間の旅行でも,これでOK(多分)。
それとビジネスバッグ。こちらは普段から使っているもので,PC(ThinkPad X220)と書類一式,財布2つ(日本円用,外貨用)などが入っています。
この時に問題になるなるのが,いかに荷物を少なくするか。ここ一年,海外出張が続いたので,その時に工夫した点や役立ったものを紹介します。

  • スーツケースに入れているもの
    • ウルトラライトダウンジャケット(ユニクロ

緯度が異なる国へ行くとき,あるいは夏冬が逆転している国に行くときに問題になるのが,何を着るか。離陸時と着陸時で半袖と長袖を替えることになります。
2013年度最後の出張は,2月末最強寒波の荒れる日本から比較的暑い地域(昼間の気温26〜30度が)への移動でした。そのため,自宅から関空の荷物チェック直後までは薄手のシャツやロンTなどを重ね着したうえに,ダウンジャケット。荷物チェックが済んだ後はダウンを折りたたんでスーツケースに入れる。その後は気温に合わせて枚数を調整していました。

    • 折りたたみスニーカー(Timberland)

半分に折ることができるのでコンパクト。街の散策をする時に便利。靴底をきちんと洗うことができれば,ホテルのジムにも使えるかと思います。
ちなみに目的地までの移動は,ラバーソールの革靴です。アレン・エドモンドのもので頑丈です。古着屋で1万円くらいで購入したと思います。
歩きやすくて,スーツスタイルでも浮かないものならなんでもOKかと思います。とにかく歩きやすさが重要。

    • 洗濯ネット

一度着た服や下着は,洗濯ネットにまとめて入れています。出張後でヘトヘトな帰宅後に一番面倒なのは,洗濯をすること。出張中の洗い物を全て洗濯ネットにまとめておけば,帰宅後にネットを洗濯機に入れる→洗濯となるので,やや面倒が省かれます。本当に`やや'ですが,精神的には大きい気がします。

スーツは折りたたんで収納。皺にならないたたみ方は以下を参照(https://www.youtube.com/watch?v=rLrgFx3YAGY)。皺になっても,軽くアイロンを当てればいいだけの話。またスーツをきたまま移動している方もいますが,私はそれほど着慣れていないので普段着で移動しています。ジーパン最高。
シャツは雑にたたんで,現地でアイロンをあてています。
ジーンズは機内でリラックスできないのでやめておけという方もおられますが,私は普段からジーンズなので不便を感じたことはありません。
ただしホテルによってはアイロンを置いてませんので,コンパクトなものを持っていくべきなのかもしれません。

スーツ用のシャツは2枚。それほど汚れるわけではないので,毎日手洗いしています。ホテルの空気は乾燥していることが多いので,一晩でだいたい乾きます。
下着は3セットほど。1週間程度でも洗えば何とかなります。
固形石鹸を小さく切ったものを持って行く(あるいは部屋に備え付けの石鹸を使って),温水で洗った後に,普通に絞って干しておけば,乾燥しているホテルの室内だと一晩で乾く場合が多いです。洗濯用のビニール袋なんかも売っています。昔使った事がありますが,水気が取れにくいのでやめました。繊細な生地のものは持っていかないので,ざっと洗ったあとに手で雑に絞っています。

忘れやすいのが寝間着用のTシャツ+半パン。パジャマは海外のホテルでは基本的に置いていません。私はこれまで利用したことがありませんが,ホテルのジムを利用することがあるなら,寝間着と兼用で,運動しやすいものを2セットほど持って行くのも良いかと思います。

服は余分に持って行きたくなりますが,それほど使わないことに気づきました。洗えば何とかなるし,最悪,現地で調達できます。

    • 小型の髭剃り

ホテルに髭剃りがあるかどうかは確率としては半々くらいでしょうか。あったとしても,備え付けのものを使うと,渡しの場合は十中八九カミソリ負けしてしまいます。発表前に血まみれになるのはごめんなので,最近は小型のシェーバーを持参しています。安いものだと千円台からあります。

  • あったら助かるけど,それほど使わなかったもの

機内で寝るときの携帯枕

使いにくい。かさ張る。最近は頭部の角度を調整できるシートもあるので,枕の持ち込みは不要かと思います。

  • ホテルで洗濯する時につかうビニール袋

絞りやすいって売り込みですが,それほど効果がなかった気がします。付き方が悪かったのかもしれませんが。。

スマホがあって,TripAdvisorのアプリを入れていればなんとかなる。
あと,現地で日本人研究者と知り合った場合,十中八九,ガイドブックを持っているので,良いプランを教えてくれます♪
あとは,ホテルで現地の地図をもらって,ホテルの人や近くの食堂の人に何処がおすすめか聞いたら,いろいろと教えてくれます。特に安くて美味しいレストランを探す時は口コミが最強かと思います。

  • ビジネスバッグに入れているもの
    • パスポート
    • 財布(日本円,外貨)

外貨用財布には,使いそびれた紙幣を日本円に換金せずに入れています。手数料はバカにならないので。
外貨への換金ですが,滞在日数x7千円を目安にしています。余る分には問題ありませんが,街中だと両替が可能な場所が見つかりにくいので。

米国などはカード文化なので現金は不要という方もいます。完全に一人で移動する場合は問題ありません。
ただ,例えば現地で会った日本人研究者とご飯を食べに行くことが結構あります。相手が全額支払って,そのあと割り勘をするって流れになることがあります。そういったときに会計時に現金で渡したほうがスムーズなので,余分に換金するようにしています。

ちなみに換金は金券ショップのほうがややレートが良いです。また小さな金額の紙幣も入れ混ぜてくれているので使いやすいです。一方で空港などで換金すると,大きな金額の紙幣で返ってくることがあります。大型紙幣は使いにくいみたいです。時間があるなら事前に金券ショップで換金することをおすすめします。

コインは帰国後に国ごとに袋に分けて管理しています。

    • 耳栓とマスク

機内は結構うるさい。なので,寝る時は耳栓が必需品。つけても完全に遮断されるわけではありません。が,外した時に,機内はこんなに大きな音がしているんだと驚きます。
BOSEのノイズキャンセラーを使えばいいのでしょうが,そこにお金をかけたいとは思えないので。また,ヘッドフォンはかさ張るので,冒頭の私のパッキングの趣旨から外れます。
ちなみに直近の出張ではaudio-technicaのノイズキャンセラーのイヤホンを持って行きました。特に低音,エンジン音の低減は大きかったです。熟睡はできないですが,静かなのは疲れを取るのに重要です。

    • e-チケットと滞在ホテルの予約メールを印刷したもの。

空港からホテルまでタクシーで移動する場合,私のような純日本人の発音では,目的地を一度で聞き取ってもらえません。なので,滞在ホテル名と住所が書いているものを見せたほうがスムーズです。
帰国時のホテルから空港までの移動にタクシーを使う場合,空港名と一緒にターミナル番号を聞かれる場合があります。航空会社によってターミナルが違う場合があるからです。

安価なものでは1万円以下で購入可能。1週間程度の滞在ですと,キャリアの海外パケ放題よりも現地でSIMカードを調達したほうが安くつきます。1万円程度の出費も数回の主張で取り戻すことができるかと思います。米国なんかだと,家電量販店や空港で安い機種が売っています。
慣れない土地で歩きまわる時にGoogle Mapはお守り代わり。
ちなみにE-MobileのNexus 5はシムフリーです。現地でカードを入れ替えると情報はそのままで,現地のキャリアに接続できます。Google Storeからキャリアに紐付けされていない機種を購入することもできます。

最近の出張では1,2本映画をレンタルしました。GoogleのPlay Storeからだと1本レンタルするのに3〜400円です。ギャオやツタヤと比較すれば割高ですが,借りてるDVDを持ち歩くわけにはいきません。また空港や国内便での時間つぶしとしては安価だと思います。移動中もずっと集中してお仕事をされる方なら不要ですが,私はそこまで体力がないもので。

葛根湯があればなんとかなる。あとは二日酔い対策のためにノ・ミカタ。

  • その他

ホテルのチェックイン時間は14〜15時くらいが一般的かと思います。フライト時間によっては早朝に目的地に到着することもあります。一度フロントに相談してみると,早い時間からチェックインできる場合もあります(シカゴで使ったホテルは朝の9時にチェックインできました。時差と移動でかなり疲れていたので非常に助かりました。他にも正午あたりには開いてる部屋に入れてもらえることが多かったです)。早めに着いた場合は一度確認したら良いかと思います。

アプリ。どの地域に行くにしてもTripAdvisorは便利。事前準備,とくにフライトの確認はSkyScanner。航空会社によったらサイトから直接チケットを購入したほうが安いようです。