FMAに参加した: 日本人はもっと参加しようよ!

いや,分かるんですよ。10月の中旬なので,後期が始まって2,3週間目。まだバタバタしている時に休校にしたくない気持ちは。ただいくつかの理由でこの学会への参加をおすすめします。

FMAについて

Financial Management Associationが開催している年次大会。学会規模は世界最大。同時に30セッションがあり,1セッションあたり3つの報告。それが3日間続く。今年はラウンドテーブルや基調講演なども合わせたセッション数は合計で271だったので,全体での一般報告数は750くらいでしょうか。学会への投稿数は1400だったとのことなので,採択率は50-60%程度。 レベルについてはなんとも言えない。たまに非常にレベルの高い論文も有る一方で,雑なものもある。ただどうしようもないほどに酷い論文は殆ど無い。正直,ここよりゆるい学会なんてたくさんあって,本当に雑な論文が混ざってる学会もある。それに比べたら,まだ最低限の脚切りはできている模様。 ただ,米国のjob marketの1つに利用されていることから,若手(Ph.Dからtenureが取れていないassistantまで)の参加者が多いです。なので同年代の知り合いを作りやすいと思います。

理由1 自分の研究分野に近いセッションがある: 深いコメントが貰える

ここで報告したのは2回目です。2回とも,この点のメリットを感じました。セッションが多いことは非常に魅力的です。理由は自分と同じ興味を持った研究だけでセッションが組まれること。私は,2回とも日本の研究者があまり手を付けていない分野と企業金融の関連性についての研究を報告しました。これらを日本でのセミナーなどで報告する際には,前提知識などを共有する必要があります。また(言葉が悪いですが)的の外れた質問が来ることもあります。もちろんそれらが役に立つこともあります。もちろん,同じ分野の研究者同士で議論することによって,得られるコメントや示唆もあります。 ここだと同じ分野の研究者があつまって意見交換をするので,より特化したコメントがもらえます。また同じ分野の研究者と知り合うことは今後,研究をすすめる上で利点になると思います。

理由2 自分の研究分野に近いセッションがある: 情報収集が楽

セッションが多いことのメリット。あるテーマについて複数のセッションが設けられていることもあります。今回も"IPO"と名のつくセッションは複数ありました。なので,上手にハシゴをすれば,ある研究分野について多くの研究報告を聞くことができます。 現在,某競争的資金の申請書類を書いているところです。(また性懲りもなく)新しい分野と企業金融のの融合分野として申請を使用と考えているのですが,その新しい分野についても複数のセッションが。質はまちまちですが,どういった点を問題意識として持っているのか,どんな研究が頻繁に引用されているのか,フロアからのコメントはどのような点に多いのか,などいろいろと知ることができます。

理由3 ぶっちゃけ雰囲気が緩い

ただしダレているわけではないです。有名な学会なので院生の時は避けていましたが,日本の院生さんもどんどん報告すれば良いと思います。セッションが多い分,1つのセッションの参加者は少ないです。報告者と討論者を併せて10人以内セッションなんて,ざらです。なので,報告をする際にそれほど緊張もしないかと。 また同じ分野の若手の参加も多いので,交流の機会になります。 ファイナンスキャンプに参加していると,日本の院生のレベルは高いように感じます。なので,ここの一般報告にじゃんじゃん応募したらいいのではないでしょうか。

日本人参加者の少なさ

今年は,上述750ほどの報告のうち日本人の報告は3件でした。1つは米国のPh.Dの院生さん。経済規模を考えると,もう少し報告者が増えるべきかと。 あるラウンドテーブルでの報告の1つが,日本のガバナンスシステムについてでした。報告内容は,日本のガバナンスシステムの酷さと,最近のガバナンス・コードについてでした。ただ内容が雑で,事実誤認も多く,あれれ?といった感じでした。なので,もう少し日本の研究者のプレゼンスを上げていく必要があります。 論文を棄却される際に,keiretsuの影響を見ていないからダメ,だとか銀行が依然として大きな力を持っているのだからこの論文は意味が無い,などといったコメントがついて棄却されることがあります。私の感覚では,日本の経済制度はバブル期前後と比較して,大きく変革しているように感じます。ただそれらについては多くの米国の研究者がキャッチアップしていことから,古い日本の印象によって棄却されることが多いのではないかと危惧しています。このことが続くと,日本の研究者は不利な条件のもとで論文を投稿し続けることになります。(そんなに言うなら私がしろよって話かもしれませんが) ただ裏を返すと,日本の経済システムが海外の研究者からどのように思われているのかを知ることは投稿をする上で重要です。そのためにも,このような(質の悪くない)学会で咆哮をすることは価値があるのではないでしょうか。

というわけで,来年の10月にラスベガスでお会いしましょう!