学会のプログラム・コミッティを引き受けてみた

学会のプログラム・コミッティを引き受けた。大きな国際学会。複数の論文をチェックする立場になっていろいろと気づいたことがあったのでそのあたりをまとめてみる。

IPO関連なら可能と言ったところ,6本の論文が送られてきた。20日以内に読んだ上で評価をしろとのこと。評価方法は1 (very excellent) ~5 (very poor)まで5段階。さらにProgram director と投稿者に対してコメントを書く。これとは別個に絶対評価,つまり1位から最下位までを決定する。

引き受けてみたらいろいろと勉強になったので書いてみる。なお,若干内容に踏み込んだことも書くけど,多分日本人応募者はいなかったので,このブログポストを読んでる人はいないはず。

経済学的貢献を書く

新しい制度に着目するのは良い。たとえば,**という制度が最近米国で導入されたので,既存の制度との比較をしました,といったもの。
けど,それに着目することが,経済学的にどうおもしろいかを書くべき。新しい制度に着目するだけだと,いくらでも論文を書くことができる。

2つの論文があり,それぞれ新しい制度Aと新しい制度Bに着目していたとする。このとき,どちらの論文を優先するかは,評価者の主観による部分が大きい。

同じ制度に着目した2つの論文があり,論文Xは「新しい制度の元では...という結果が得られました」と,論文Yは「新しい制度の元では...という結果が得ら,これは経済学的には...」という貢献が考えられます,と書くのでは後者の評価が高くなる。

Introで論文の貢献点を明示的に書く場合

最近「本研究は3種類の研究分野に貢献がある。第1に~」って書くのが流行てますね。送られてきた論文の大半にも書かれていました。ただ,その論文のテーマに似た分野を上げて,その分野の先行研究を列挙するだけだと面白くない。その分野の中で,該当論文がどういった観点で新しいのかを書いてくれたほうが,選び手の心にぐっとくる。あと,無理やり3つの分野を上げる必要もないのではないかと思う(個人的な感想)。
おそらくこういったスタイルが広がっているのは,先行研究を纏めるのに使いやすいから。ただ個人的には脚注に纏める,あるいはliterature reviewの構成を工夫することが,より効果的に先行研究を紹介できると思う。

学会報告と雑誌査読

今回は学会報告だったので,将来性も加味した評価になったと思う。つまり,現段階では不備が多いが,ディスカッションが盛り上がるのじゃないのか,またそれによって論文の質が向上するのではないか,と予想できる場合には甘めの評価になった様に思う。逆に体裁は整っているが,貢献が薄いと判断された場合は辛めの評価になったと思う。

ただ,雑誌投稿への査読の場合,ポテンシャルがあるけど体裁がなっていない,分析が不完全である論文は,リバイスに時間がかかるために却下になると思う。このあたりの評価基準の違いはあると考えられる。

蛇足

Stataの出力結果をそのまま貼り付ける奴は滅びろ!